世田谷シンクロニシティ/本郷地下
人の心はグラデーションの様にはっきりしていないものです、本郷地下さんの「世田谷シンクロニシティ」について。
恋をするのは女の子なのに男にしか欲情できない大学生、樋村高史(たかふみ)と深町巳晴のお話。
高史は同棲している年上の彼女、舞の転勤に伴い住むところを探すことになります。
その話をしたところ同級生から現在住んでいない寮の部屋を使っても良いとの申し出が。
ただ、「相部屋のやつがさ"あっち系"らしいから気をつけてな」…。
高史はその話を受け、部屋に踏み入れてビックリ。
バイト先の喫茶店で気になっていた深町が同室だったのです。
二人はバイトをしながら勉学に励む「苦学生組」という共通点がありました。
講義の席が隣だったり単発バイトが一緒だったりという偶然が頻発。
とにかく行く先々で高史と深町は”偶然”会います。
細かい偶然を重ね、二人はそれぞれの思い人への気持ちを処理して結ばれます。
この話で一番好きなのは「高史が彼女の舞をちゃんと好き」なところ!!!!!
舞さんは仕事が出来るさっぱりした女性で、高史の体質も理解した上で付き合っていました。
そして高史は舞さんが好きだから身なりもちゃんと整えて、サプライズのプレゼントを用意して眺めのいいレストランでそれを渡すというデートプランを考えるという優しい男性!
二人の空気感はお互いを尊重してるというのが伝わって心地よかったです。
尊重しているからこそ、別れてしまうのですが…。
深町の思い人は高史と同じ名前の「たかふみ」。
同性が好きというのを理解できなかったため、深町は今まで深く傷ついていたのだろうなと思わされます。
人間を信じられなかった深町と人間を愛することが出来る高史が結ばれて幸せな結末を迎えるのは泣くほど喜ばしい出来事です。
表紙の涙の意味は読み終えれば分かる、心憎い演出。
あと本郷地下さんの作品は初めて読んだのですが、背景を細かく描き込みされていてよーく見るとキャラクター達の性格が滲み出るのも良かったです。
そういう目線で見ると、最後に収録されている数年後のお話はニヤニヤの宝庫ですね!
自分が何者なのか決めなくていい、変わっても変わらなくても自分は自分だという強いメッセージに涙が出ます。
pixivコミックで1話を試し読み出来ますので気になったら是非!